二種類の愛国心 『誇りを持って戦争から逃げろ!』より
私は以前、どちらかと云うと愛国心を持つべきだと思っていた。それは家族愛、郷土愛の延長線上のものだ。だが、たまたま当時恵まれていたからそう思えただけかもしれない。誰もが恵まれた環境にいるわけではないし、今はよくてもいつ転落するか分らない。
『誇りを持って戦争から逃げろ!』(中山治 ちくま新書)では愛国心を「応援愛国心」と「戦争愛国心」に分けている。
「応援愛国心」は自然感情に基づくもの、スポーツ、科学技術、芸術などの分野で「日本と日本人にエールを送る愛国心」のことだ。人を愛するのと同じで、愛がある間は一緒に暮らすが、なくなれば離婚するようなもの。
「戦争愛国心」は「国家のために銃を取り、命を捧げる愛国心」のこと。国家権力が心理操作を使って、国を愛し国家に忠誠を尽くすことを人々に植えつける愛国心のことだ。
中山治は「戦争愛国心」をさらに「契約型」と「情緒型」に分けている。「契約型」なら国家への愛が消えれば「契約破棄」だ。ヒトラーが「最後の一兵まで命を捨てて戦え」と命令しても、いくらなんでも玉砕はできないと判断した時点でドイツ軍各部隊は降伏した。
それに対し日本は「情緒型」で、愛国心教育というと集団情緒の同調圧力が生む無限定の戦争愛国心に行きつく。無限定は限度がないということなので、最後は自爆攻撃になる。流されやすい日本人の集団の中で、ある観念が同調圧力となって吹き始めると暴風になる危険性がある。
お上の方から愛国心を持つように教育するなんて絶対におかしい。素晴らしい国だったら自然と愛国心を持つ者が増えるはずだ。馬鹿な男が女に暴力をふるい、虐待し、風俗で働かせてその給料を搾取し、「俺を愛せ」と云ったところで誰が愛するものか。わざわざ洗脳しなくては愛国心を持てないと証明しているようなものではないか。
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